御朱印集めの始め方

御朱印

近年のパワースポットブームに端を発して、従来の霊場巡り以外でも御朱印を集める人が増えてきました。御朱印帳を片手に寺社巡りをする女性を「御朱印ガール」と呼ぶなど、メディアも大きく扱い、一種の社会現象のようになっています。

現在は新型コロナウイルス感染症拡大防止のための移動自粛で少し落ち着いていますが、コロナ禍が落ち着いてまた気軽に出掛けられるようになったら御朱印集めを始めたいと思われている方も多いのではないでしょうか。

そこで、御朱印帳(納経帖)を作る立場の表具師として、また、お寺の出入り業者として、御奉仕の中で御朱印を書かせていただく者として、これから始めようと思われる方の多くが持つであろう以下の疑問に答えたいと思います。

  • 御朱印帳はどこで買えるの?
  • 御朱印帳はお寺と神社で分けるべき?
  • 御朱印帳の裏面を使うのはマナー違反?
  • 御朱印をいただく時に気をつけることは?
  • 御朱印帳の保管はどうすれば良いの?

結論から言うと、教義として御朱印や御朱印帳(納経帖)の扱いを定めている教宗派はなく、御朱印帳自体は宗教的なものではありません。なので、こうしなければならないという決まりはなく基本的には持ち主である皆さんの自由です。ただ、自由だからと言って、御朱印をいただく場所はお寺や神社などの宗教施設であり信仰の場ですから、他の人や授与所の方に不快な思いをさせないよう気を付けるというのがポイントです。最後まで読んでいただくと、きっともやもやが解消しますよ。

御朱印帳の基本の「基」

御朱印帳とは、元々は写経しゃきょうを寺院に納めた際の受付印を集めた専用の帳面で、集印帳しゅういんちょう納経帖のうきょうちょうとも呼ばれます。昔は和綴じわとじ和装本わそうぼんでしたが、大正時代に蛇腹式じゃばらしき折本おりほんが生まれ、現在は折本が主流となっています。

一般的なサイズ

現在主流の御朱印帳のサイズは2種類

現在主流の御朱印帳の大きさは2種類です。左側は 縦18cm×横12cm で、昔から一般的に使われていたサイズです。寺院オリジナルの御朱印帳はこのサイズのものが多く、大判サイズとも呼ばれています。右側は 縦16cm×横11cm で、気軽に持ち運ぶのに便利ということから近年一般的になってきました。神社オリジナルの御朱印帳にはこのサイズのものが多く、小判サイズとも呼ばれています。

一般的なページ数

西國三十三所観音霊場さいごくさんじゅうさんしょかんのんれいじょう四国八十八箇所巡礼しこくはちじゅうはちかしょじゅんれい全国一の宮巡拝ぜんこくいちのみやじゅんぱいなど、各霊場会が専用の御朱印帳を販売している場合もありますが、特にテーマを決めずに御朱印集めを始めるのであれば、御朱印帳集めも兼ねて少なめのページ数のものがおすすめです。

現在主流になっている御朱印帳(蛇腹式の折本)は、複帖ふくじょう(各頁が二重)の24やま(裏表で48ページ)が基本仕様になっています。複帖は裏写り防止のため、基本が24山というのは、特にテーマがない場合、1ヶ月2~4ヵ所の巡拝で1年1冊のペースになりちょうど良い感じだからと言われています。

御朱印帳はどこで買える?

比較的大きなお寺や神社では、納経所や御朱印の授与所、売店などでオリジナルの御朱印帳を販売されているところも多いです。寺社オリジナルの御朱印帳には凝ったデザインのものも多く、基本的にはそこでしか買えないので、お参りの記念品としてその御朱印帳を集めている方もいるほどです。

また、大きなお寺や神社の参道にあるお土産屋さんなどでも、御朱印帳を取り扱っていることがあります。中にはそのお店オリジナルの御朱印帳があることも。ただし、多くの場合、扱っている御朱印帳は、オリジナルではなく後述する市販品で種類もそれほど多くはありませんのでご注意を。もちろん、御朱印帳を忘れた時には重宝しますよ。

その他、大きな書店や文房具店でも扱っているお店があります。ごく稀にオリジナルの御朱印帳を置いているところもあるようですが、基本的には上記のお土産物屋さんと同様、市販品で種類も多くはありません。

さて、先ほどから「市販品」と言っている御朱印帳ですが、その多くは御朱印帳制作会社で作られ、土産物店、書店、文具店などに卸販売されているものを指します。もちろん、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングといった大手のネット通販サイトでも買えますし、中には御朱印帳制作会社自身がネットショップを持っているところがあり、そこからも購入が可能です。お気に入りの1冊をじっくりと選ぶならインターネット通販がおすすめ。実際に手に取って選ぶことはできませんが、レビューや口コミが参考になりますので、一度覗いてみることをお勧めします。

それでもお気に入りの御朱印帳が見つからなかったら、自作キットも売られているのでご自分で作ることもできますよ。

自作は難しいけど、お気に入りの裂やデザインで世界に一つしかない御朱印帳が欲しいというときは、和装本(折本)を手掛ける表具師の出番です。お気軽にご相談ください。

お寺と神社で御朱印帳は分けなきゃダメ?

これは少し難しい話なのですが、原則として分ける必要はありません。実際に多くのお寺や神社では一緒でも問題ないとして御朱印を頂けます。

ただし、御朱印は写経を寺院に収めた受付印がルーツですから、仏教寺院では今でも写経を納める、またはお経を唱えるなどの納経を重視されるところもあります。逆に神社の場合は納経という概念がありませんので参拝の証であったり、ご神体のお札と同等の扱いとされるところもあります。そのような神社ではお寺の御朱印が押された御朱印帳(納経帖)への御朱印を拒否されることもあるそうなので、神社用に小判サイズの御朱印帳を別に用意されても良いと思います。

お寺と神社で分けるよりも、むしろ日蓮宗にちれんしゅうとその他で分ける方が良いかも知れません。日蓮宗では御朱印とは別に「御首題ごしゅだい」と言って、「南無妙法蓮華経」の御題目おだいもくと寺院の名前を書いて朱印を押していただけます。ただ、ご寺院によっては、他の宗派や神社の御朱印が押されている御朱印帳には御首題とは異なる御朱印を書かれたり、そもそも御朱印自体を断られる場合があるようです。なので、日蓮宗寺院で御首題をいただきたいのであれば、御首題だけを頂戴する「御首題帳ごしゅだいちょう」をご用意されると良いと思います。

という訳で、これから始められる方は、まず、大判サイズの御朱印帳を1冊用意し、お寺の御朱印集めからスタートし、巡礼先で断られたら、素直にあきらめるか、さもなくば神社用の小判サイズや御首題用の大判サイズをその場で追加するのも良いかも知れませんね。

御朱印帳の裏面を使うのはマナー違反?

御朱印帳の裏面の利用については、Yahoo!知恵袋などでも昔から論争(?)があり、迷うところではありますが、結論から言うと自由です。

先にも述べましたが、現在主流になっている御朱印帳(蛇腹式の折本)は、複帖ふくじょう(各頁が二重)が基本仕様になっていて、最初から両面を使うことを前提に作られています。また、霊場会などが監修している書籍でも裏面の使用を勧めているものも見受けられますので、裏面の使用がマナー違反になることはないと思います。

では、なぜ裏面を使うべきではないという意見があるのかというと、墨の裏写りが起きる場合があるからでしょう。裏写りは御朱印帳の紙質や墨の濃さや量、書く人の運筆の癖により起こります。表面が全て終わった時に裏写りが1か所もなかった場合、その御朱印帳は裏写りの起こりにくい良質の紙だと言えますが、これからいただく御朱印が裏写り(この場合は表写り?)しないという保証にはなりません。

いただいた御朱印を奇麗に保存したいのであれば、裏面を使わないというのも一つの選択肢だと思います。でも、御朱印帳1冊にいただける御朱印の数が半分になり、御朱印帳の数が増えて保管場所に困るという方のために、裏写りの予防方法と、裏写りを気にせずに裏面を有効活用する方法を紹介します。

裏写り予防法:間に1枚、紙をはさむ

御朱印帳の表と裏のページの間に、もう1枚、下敷きになる紙を挿みます。習字に使う薄手の半紙などがあれば良いですが、なければコピー用紙でも構いません。ただし、コピー用紙は薄手の再生紙の方が良いです。御朱印をいただいたときに墨書きが隣のページにうつらないようにと、一緒にいただける「はさみ紙」を再利用しても良いですね。

裏面の活用法:書き置きの御朱印を貼る

御朱印を書いてくださる専任の方が常駐していないお寺や神社では、事前に御朱印帳の大きさの和紙に書いたものを用意してあるところもあります。これは「書き置きの御朱印」と言って、有名なお寺や神社でも土日などとても人が混む時にいただいたり、御朱印帳を忘れた時にいただけたりするのですが、これをいただいた時に、御朱印帳の裏面に貼れば、裏写りしたページも隠せて良いですよ。

書き置きの御朱印を貼るなら大判サイズの御朱印帳がお勧めです。それでも中には余白を切らないと貼れない書き置きの御朱印もありますが、墨書き自体をカットする必要はまず無いので安心です。

糊はスティック糊がお手軽で便利。奇麗に貼れるという点ではスプレー糊もおすすめですが、糊が飛び散らないように新聞や段ボールなどを敷いて作業するのが面倒です。その点、スティック糊だと下準備も不要ですし、工作が苦手だなぁという方でも比較的上手に貼れると思います。

御朱印をいただく時に気を付けることは?

御朱印は参拝の証です。山門から御朱印の授与所に直行して、書いていただいたら急いで次のお寺に向かうというのは、いくら自由だとは言え本来の趣旨から外れますのでお控えください。

ここからは御朱印を書かせていただく立場からのお願いです。

近年の御朱印ブームのおかげで納経所や御朱印の授与所が混雑し、皆さんには少々お待ちいただくことがあります。その待ち時間に少しだけご協力いただけるとありがたいのが以下の3点です。

  • 御朱印帳のカバーは外しておいてください
  • 他の寺社でいただいた書き置きの御朱印やはさみ紙など紛失したら困るものは外しておいてください
  • 志納料(御朱印の代金)はなるべく小銭をご用意ください

御朱印帳にカバーが付いたままですと、開きにくかったり書き損じの原因になったりしますので、ご面倒ですが外していただけると助かります。また、御朱印帳に何かを挿んだままですと書き損じの原因にもなります。なによりそれが他の寺社からいただいた書き置きの御朱印ですと汚してもいけませんし、紛失の恐れもありますから、まだ貼る前で挿んでいるだけならば外してご自分で保管しておいてください。また、これは強制ではありませんが、お釣銭が不足する場合もありますので、志納料はなるべく小銭でご準備ください。

さて、順番が来たらどの御朱印をどこに書けば良いのか、はっきりわかるようにお伝えください。お寺や神社によっては複数の御朱印があります。何も言われなければ御本尊の御朱印を前の御朱印の続きに書かせていただくことが多いのですが、トラブルを避けるためにも希望があるならお聞かせください。

また、複数の御朱印がある場合、複数のご依頼は基本的にお受けできますのでお気軽にお申し付けください。ただし、混雑の状況によっては1つだけとか2つまでのように制限を掛けさせていただくこともあります。これは寺社の都合というより他の参詣人の皆さんのためですので、譲り合いの心をもってご協力をお願いいたします。

あと、ここからは個人的なお願いレベルですが、御朱印を書かせていただいている間は、なるべくお静かにお願いします。私たちも参詣人の皆さんといろいろとお話しをしたいと思ってはいるのですが、御朱印は一つひとつ集中して丁寧にお書きしていますので、書き損じを誘発するような会話や写真、動画の撮影はなるべくお控えください。

それと、仕上がりがガイドブックや授与所に掲載しているサンプルと違う場合でも、温かい目で見てください。御朱印は書く人によっても印象がかなり変わります。書籍や授与所に掲載されているサンプルは、基本的に授与所で御朱印を書いている中で一番上手い人が、何枚も書き直した内の最高の一枚であることが多いので、本人でも書けません。ネットに上がってる御朱印の写真を見せられて「こんな風に書いて欲しい」と言われることもありますが、それが自分の書いたものでも再現は無理ですので、発想を転換して「世界に一つしかない御朱印」との一期一会を楽しんでいただければ幸いです。

御朱印帳の保管はどうすれば良いの?

御朱印集めを始めると、次に問題になるのが御朱印帳の保管方法です。

今、集めるのに持ち運んでいる御朱印帳はカバーを掛けたり専用の袋に入れてバッグに入れておけますが、家でどう保管すれば良いのかわからないという方も多いと思います。

先に述べましたが、教義として御朱印や御朱印帳(納経帖)の扱いを定めている教宗派はなく、御朱印帳自体は宗教的なものではありません。なので、基本的には持ち主である皆さんの自由です。ただ、御朱印は納経の受付印として始まり、現在は参拝の証としていただくもので、仏様、神様との御縁を結んだ証ですから、やはり大切に保管したいものです。

仏壇の引き出しに入れておく、桐箱に入れて神棚に上げる、貴重品として金庫にしまう、専用の桐箱に入れて押入れにしまう。大切にするという形は人それぞれです。こうやって「しまう」という形で保管するのも良いですが、例えば本棚に並べて折りに触れて手に取って眺めるなど、身近に置いて暮らしの一部として楽しむのも大切にするという一つの形だと思いませんか?

ここで表具師として一つの提案をしようと思います。御朱印帳をそのまま飾るのも良いですし、その中の特に思い入れのある御朱印を開いた形で飾るのも素敵だと思います。御朱印帳をばらして思い入れのある御朱印をピックアップし、額に入れたり屛風や衝立に仕立てたりするのも良いですね。残りの御朱印はクリアファイルや御朱印専用の保存ファイルに入れて手元に残し、思い入れのある御朱印は別の形で身近に飾って楽しむ。これができるのも表具師の技があってのことです。興味を持たれた方はお気軽にご相談ください。

もちろん、西國三十三所観音霊場や四国八十八箇所巡礼などの集印マクリの軸装も承っています。

まとめ

今回も長くなりました。一つひとつの見出しごとに独立した記事にしても良いくらいですね。

上記のように御朱印帳そのものは宗教的なものではありませんから、以下の2点を忘れさえしなければ、基本的には持ち主である皆さんの自由です。

  • 御朱印は参拝の証としていただくもので、御朱印帳は仏様、神様との御縁を結んだ証ですから、ありがたいものと考えて、大事に丁寧に扱う
  • 御朱印をいただく場所はお寺や神社などの宗教施設であり信仰の場ですから、他の人や授与所の方に不快な思いをさせないよう気を付ける

あとは難しく考えず、お気に入りの御朱印帳を1冊持って寺社巡りを始めてください。1つ目の御朱印をいただいた時から新しい世界が広がります。そして、その御朱印帳を身近に置いて暮らしの一部として楽しむことで、暮らしがより豊かになると思いますよ。

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