床の間以外に掛軸を掛けても良いの?

掛軸

Yahoo!知恵袋で「床の間がないのに、書の掛け軸をかけてはダメですか?」という質問を見つけました。

なかなかいい回答がベストアンサーになっていますし、既に解決済みなのですが、まず、結論から言うと、私からの回答も「どこに掛けても構わない」です。

うちの店では、掛軸を仕立てる時に、お客様には掛軸を掛けるご予定の場所をお聞きしています。和室の床の間なのか、洋室や玄関、廊下や階段の壁なのか、可能であれば、掛ける場所の写真を見せていただくこともあります。それを基に、壁面の色やお部屋の雰囲気に最適なデザインやきれの取り合わせをご提案させていただいています。完全オーダーメイドだからこそできる作品の楽しみ方ですね。

床の間以外の実例

美術館や一般的なギャラリーで掛軸をご覧になったことがあるならご存じとは思いますが、展示スペースは和室どころか和風でもなく、掛軸は白っぽい壁に掛けられていることが多いです。美術館では資格のある学芸員さんたちが美術品を鑑賞するのに最もいい状態で展示しているのですから、和室の床の間以外でも全く問題ない訳です。(ちょっと屁理屈っぽいですが……)

海外には、日本好きが高じて和室や日本庭園、茶室なども作ってしまう猛者もいらっしゃいますが、基本的には和室はありません。でも、お土産として伝統的な形式の掛軸を買って帰り、洋室の壁や階段の踊り場にセンス良く飾っていらっしゃいます。この点は固定概念のない強みですね。

うちも、和室の床の間以外に、階段の正面の壁や玄関脇の袖壁そでかべにも掛軸を掛けています。また、書道の先生のお宅では、玄関の正面の壁の上やリビングの一角にピクチャーレールを設置してギャラリースペースを設け、書作品の掛軸や額を掛け替えて楽しんでいらっしゃいますよ。

洋室に掛ける掛軸

伝統的な形式であっても、丸表具まるひょうぐ(袋表具ふくろひょうぐ)などシンプルなデザインの掛軸は意外と洋室にもマッチします。特に書作品や水墨画のように墨の濃淡だけで描かれたものは、洋室に限らず、どこにでも合うんですよ。先に紹介した書道の先生のお宅でも、先生の書作品がリビングや玄関に掛かっています。

また、最近では従来のスタイルとは違う現代表装を手掛ける表具師さんも増えてきました。当店でも日本手拭いやハンカチ、ハガキや色紙、そして写真などを本紙に、床の間以外に掛けることを前提とした創作表具を手掛けていて、表装美術展にも出展しています。

掛軸を「和のテイストのあるタペストリー」として見ると、今までにない楽しみ方が見つかるかもしれませんよ。

掛ける空間の演出

佛表具ぶつひょうぐお茶掛けおちゃがけなど、和室や茶室の床の間と深く結びついた伝統的な形式の掛軸であっても、もちろん床の間以外の場所に掛けても構いません。それでも洋間に掛けるには勇気がいるなぁという方には、簡易な「置き床おきどこ」を作って、掛ける場所に少しだけ和の趣を持たせるという方法があります。

作ると言っても、何も大掛かりな工事をする必要もなく、床よりも一段高くなるように板を敷いたり、机を置いたり、飾り棚や引き出しのある家具を置いたりして、そこに花を生けるとそれだけで置き床が完成します。テレビ台を流用しても良いですね。

それを壁際に置き、そこに掛軸を掛ければ、たとえ洋室でも和の趣のある空間になりますので伝統的な形式の掛軸もしっくりと納まります。そして、生ける花や飾る小物により季節感を演出できますし、和風にも洋風にもアレンジできますから、上で紹介した洋風の掛軸も違和感なく掛けられます。

また、掛ける場所に自由度を持たせたいなら、掛軸スタンドと置き床を組み合わせるのも良いですよ。この組み合わせだと、和室に置いたり、洋室に置いたり、玄関でお客様をお迎えするしつらえに使ったりと、その時々に合わせて動かすこともできます。なにより、壁に穴を開けませんから賃貸住宅でも安心ですね。おためしあれ。

まとめ

掛軸には基本的に飾る場所の制約はありません。なので、床の間以外の場所にかけても良いですし、マナー違反にはなりません。

新しい「和の装い」の室内装飾品として、現代の家にも調和した自由な発想の掛軸もありますので、床の間や和室にこだわらず、洋室や玄関、廊下や階段の踊り場の壁など、それこそ自由に楽しんでみてください。

それでも、和室以外に掛けるのに躊躇するときは、上で紹介した置き床や掛軸スタンドを使って掛ける場所に少しだけ和の趣を持たせてみてはいかがでしょう。

掛軸は和室の床の間に掛けるものだという固定概念を捨て、「和テイストのタペストリー」として捉えることで新しい世界が開けるかもしれませんよ。

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